わたしたちが見ているあの雲はいつ生まれるのでしょうか。

南阿蘇に暮らすと、山の影から不意に現れる低い塊や、川から生まれる雲の海や、雨上がりの山から湧き出るそのときを見つけることができます。

身近にあってどこにでもあり、ありふれたものだからこそ、そうして間近に現れたとき、はじめて意識する存在でもあります。これは、私たちがアートというものに感じる一側面と重なっています。

雲を掴むような話かもしれませんが、絵を掛ける生活は、その壁に窓をひとつ持つことと似ているかもしれません。その窓から見える雲は、たとえばこんなふうに、私たちの心を映すのです。

歳雪 [Sai-Sez]

生活の背景に流れる通奏低音のような表現行為を模索して暮らす。「具象と抽象の”あわい”を手ざわりとして抽出する」をテーマに、家具としての平面作品を制作。南阿蘇在住。